俺が、私で、アイドルで - 秘密を抱いてステージへ
 眩しいライト。割れるような歓声。
 レイは一歩踏み出した瞬間、膝が笑いそうになった。

 ――やばい、足が震えてる。

 客席の熱気が押し寄せてきて、マイクを持つ手が汗で滑りそうになる。
 イントロが流れる。ヒナタの明るい声が響いた。

「みんなー! 一緒に盛り上がろうぜ!」

 その声が合図のように、体が動き出した。
 アオトの安定した歌声、ユウキの切れ味あるラップ。
 レイは呼吸を合わせ、歌のパートを迎える。

 声を出した瞬間――観客のざわめきが一瞬止まった気がした。
 音が体を通って、ステージ全体に広がっていく。
 緊張は、消えた。

 ステップを踏み、腕を振り、旋律に身を委ねる。
 ライトの熱も、汗も、全部どうでもよかった。
 ――歌うのが、楽しい。踊るのが、気持ちいい。

 気づけば、客席が揺れていた。ペンライトの光が波のように広がっていく。歓声が音楽に重なり、胸に響く。

 最後のポーズで音が途切れる。
 一拍の静寂。次の瞬間、会場が地鳴りのような歓声に包まれた。

 息が切れているのに、胸の奥は熱くて、痛いくらいだった。
 ――これがステージ。
 ――ここでなら、私は輝ける。

 レイは無意識に笑っていた。
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