皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました

第9章 舞踏会の誓い

舞踏会当日の夕刻。

窓の外が茜色に染まる中、私は侍女たちに囲まれていた。

髪は美しく結い上げられ、宝石の髪飾りがきらめく。

ドレスは夫人が選んでくださった淡いブルー、胸元には繊細なレースがあしらわれていて、鏡に映る姿は――自分ではないみたいだった。

「……本当に、私で大丈夫でしょうか。」

思わずこぼれた弱音に、支度を見守っていた公爵夫人がそっと近づいてきた。

「大丈夫よ、エリナ。」

彼女は私の肩に手を置き、柔らかく微笑んだ。

「どんなに美しい衣装でも、着る人が自信を持たなければ輝かないの。あなたは皇太子殿下に愛されている。それだけで、十分に誇りを持ちなさい。」

胸が熱くなった。

――そうだ、私はただの侍女ではない。

セドの隣に立つ未来を選び取ったのだ。

「はい……自信を持ちます。」

夫人は満足そうに頷き、扇子で口元を隠して笑った。

「その笑顔なら大丈夫。今夜、あなたは必ず輝くわ。」

その言葉を胸に刻み、私は震える足に力を込めた。
< 121 / 151 >

この作品をシェア

pagetop