皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「エリナ。」

ルーファス公爵閣下は厳しくも優しい眼差しを向けてきた。

「今度の舞踏会で――君をお披露目しよう。」

「……お披露目……」

思わず小さく繰り返す。胸が高鳴り、不安が押し寄せてきた。

舞踏会といえば、王侯貴族たちの視線が一斉に注がれる場所。

失敗すれば、セドの顔に泥を塗ってしまうかもしれない。

そんな私の手を、セドがそっと握った。

「よかったな、エリナ。」

その瞳は心から嬉しそうで、私の胸に温かさが広がる。

「で、でも……私に務まるでしょうか。」

セドは微笑み、私を抱き寄せるようにして囁いた。

「大丈夫。俺がついているから。何があっても、おまえを守る。」

公爵閣下もふっと笑みを浮かべた。

「そうだな。エリナだったら大丈夫だろう。」

その声には確かな信頼が込められていた。

私は深く息を吸い込み、二人の言葉を胸に刻む。

――そうだ、怖がってばかりではいけない。

セドの隣に立つために、私は一歩を踏み出さなければならない。
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