皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「でも……殿下のお心を想うと……」

必死に言葉を探す私に、セドが静かに問いかけた。

「エリナは……俺のために泣いてくれるのか。」

その声と同時に、ぎゅっと抱きしめられる。

胸板の硬さと温もりに包まれ、息が詰まるほどだった。

「浴室でもそうだったな。あの時も……お前は俺のために泣いてくれた。」

湯浴みの時のことが脳裏に蘇る。

何も言わず、ただ抱きしめられていたあの夜。

殿下は孤独を隠すように、私の肩に顔を埋めていた。

「優しい女だ。」

囁く声が耳元に溶ける。

胸が締め付けられた。私はそんな女じゃない。

ただ好きだから、放っておけないだけ。

立場も忘れて、初恋の人を想って涙を流す――それしかできないのに。

「殿下……」

震える声が漏れた。

抱きしめられるたびに、幸せと苦しさが入り混じり、どうしようもなく涙が溢れてしまうのだった。
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