皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
でも――言えない。ただ、涙が頬を伝い落ちていくばかりだった。

「正直に言ってくれ。」

セドが私の顔を覗き込み、真剣な瞳で迫る。

もう逃げ場はなかった。

胸の奥に隠してきた想いが、今にも零れ落ちそうになる。

「殿下は、私の……」

今の気持ちは言えない。けれど、せめて過去の私を知ってほしい。

幼い日から、ずっと憧れ続けてきた心だけは伝えたい。

「……初恋の方です。」

震える声で吐き出した瞬間、温かなものが私の唇に触れた。

「殿下……?」

驚きで目を見開いた私を、セドは強く抱き寄せる。

「嬉しい……エリナ。」

低く囁かれ、さらにぎゅっと抱きしめられる。

彼の心臓の音がすぐ近くで響き、涙がまた零れそうになる。

初恋は叶わないと信じていたのに――その想いを告げた瞬間、世界は甘く優しい色に変わっていった。
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