皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
ある日のこと。私が馬術や剣術の稽古に励んでいる姿を、ルーファス公爵閣下に見られてしまった。

「女性の身で……男と同じことを習うとは。」

低い声に、思わず背筋が凍りつく。

閣下は、私がてっきり淑やかに、女らしく成長していると思っていたらしい。

だが、実際の私は汗にまみれ、木剣を振り下ろし続ける姿――。

さらに閣下は私の技量を見抜き、ため息を漏らした。

「しかも、その腕前は並みの男よりも上だというのだから……。がっかりだよ。」

胸がきゅっと締めつけられる。

努力を重ねてきた成果を、誇りに思っていたのに。

期待してくださっていた方を失望させてしまったのだ。

「エリナが男だったら、近衛になったかもしれないのに。」

その言葉は鋭く突き刺さり、しばらく耳から離れなかった。

――もし私が男に生まれていたら。殿下をもっと近くでお支えできたのに。

女に生まれたことを、その時ばかりは心から悔いた。

木剣を握る手が震え、目の奥に熱いものが込み上げてくるのを必死にこらえた。
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