皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
そして、彼もまた一つの宿命を背負っていた。

背格好がセドに似ていたアルキメデスは、いわば「影武者」として、皇太子付の近衛騎士に抜擢されたのだ。

「アルキメデスばかり、ずるい……」

幼い頃の私は、その役目の重さを知らずに嫉妬ばかりしていた。

剣術も馬術も共に励んでいたのに、いつも殿下の隣に立つのは彼。

羨ましくて、悔しくて――けれど、心のどこかで自分とは違うと分かっていた。

そんなある日、彼は淡々と口にした。

「何かあったら、殿下の代わりに死ぬのは俺なんだよ。」

その言葉に、私は衝撃を受けた。

冗談ではない、瞳に宿る決意を見て分かった。

彼は本気でそう思っているのだと。

その瞬間、私は初めてアルキメデスの覚悟を知った。

羨望や嫉妬を抱いていた自分が恥ずかしくて、胸が締め付けられた。

（彼もまた、殿下を命懸けで守ろうとしているんだ……）

それを理解した時、アルキメデスはただの友人ではなく、同じ“殿下を支える者”としての同志に見えるようになった。
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