「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「センセー、雑なんですよね~。
 絶対、机周りもひどいですよ」

「センセーって、大学の教授かなにかか?」

 まあそんな感じです、と珠子は言った。

 本の内容から、そう当たりをつけたのだろう。

 本買ったら帰るのかな、と思ったが、おつりを受け取りながら、晃太郎は言う。

「池田には今後、私が給金を渡すからと言っておいた。
 借金の肩代わりの方は、お前を気に入ってからでいいと言われた」

「気に入ったんですか?」
と珠子は笑って訊いてみた。

 絶対に気に入ってなさそうだったからだ。

 だが、晃太郎は、

「気に入った」

 そうまっすぐ珠子を見つめて言った。

 うっかり、ちょっとときめいてしまったが、

「ここは、いい品揃えだ」
と晃太郎は続ける。

「……私じゃなくて、この古書店を買ったつもりなんですね」
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