「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 傘は置け、と言いたくなるところだが。

 当時、日本では日傘が流行っていた。

 絹や呉絽、アルパカなどを使った晴雨兼用の傘など。
 お洒落な傘も出回っていたが。

 傘を持っていると帯刀しているように見えるという理由で、洋傘が禁止されたこともあった。

 だが、国産の洋傘が出たこともあり、多くの日本人が日傘を差して歩いている。

 西洋的で小粋な感じがしたのかもしれない。

 ……別に岩崎様と出かける日が晴れるといいなと思って、天気を知りたいわけじゃないけど。

 晴だったら、箪笥の奥にしまっている大事なお気に入りのお洋服を着てもいいし。

 お母様が残していってくれたまま、まだ袖を通していなかったお着物を着てもいい。

 久しぶりに楽しいな、と珠子は思っていた。

 誰もいなくなって、ガランとした家はちょっと寂しいけど。

 古書店に来るお客さんたちは博識で愉快な人が多いし、それなりに充実した毎日だと思っていた。
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