「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 



 動物園を出たあと、珠子たちは上野公園を少し歩いた。

 不忍池のほとりから池の小島にある弁天様のお堂を見る。

 一面の緑の蓮の葉の向こうにあるそれを見ていると、
「蓮の花が開くころ、また来たいな」
と晃太郎が言う。

「そうですね」

「そういえば、蓮の花が開くときに、ぽん、と音が鳴るという伝説があるそうだが」

「それは聞いてみたいですね」

 晃太郎と二人、夜の月に照らし出された不忍池で、ぽん……と静かに花開く蓮を眺める幻を見る。

 だが、そんな妄想をしながらも、珠子は冷静だった。

 ……こんなにたくさんの蓮の花が一斉に花開いたら、

 ぽんぽんすぽぽーんっとうるさいのでは?
と思ってしまった。

 どうにもロマンティックになりきれない珠子に、晃太郎が、
「珠子」
と呼びかけてくる。
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