「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「おはよう、珠子さん」
朝、珠子が店の前を掃いていると、小太郎が人車を引いて現れた。
「おはようございます、小太郎さん」
小太郎は牛乳屋の息子だ。
爽やかな男前で足も速いので、娘とおかみさんが彼の顔を見たいがために、無理して高価な牛乳の配達を頼む家もあるくらいだ。
ちなみに、珠子の牛乳代は、池田家が払っている。
囲われ者として買われるときに、
「ご契約のとき、皆様に、ひとつ、贈り物をしております。
珠子さまもお好きな装飾品など――」
と贅沢品を送ることを約束されたのだが、珠子は、
「いえ。
装飾品はいりません。
その代わり、今のまま、牛乳を毎朝飲みたいのですが」
と執事の黒崎に頼んだのだ。