「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 高平に珠子の話を振られた池田が言う。

「そうそう。
 会ったこともないし、家がどの辺りにあるのかもよく知らないんだが。

 そうだな。
 古書店の店番をしているということくらいしか。

 だが、話したことはあるぞ」

「……会ったこともないのに?」
と高平が自分の心の内を代弁してくれた。

 いつも通り、腹立たしいくらいなんの憂いもない顔で、池田は気持ちよく酒をあけながら言う。

「電話で」

 ――電話でっ!?

「話してみるか?」

「い、いや、いつも会ってるから……」
とうっかり言ってしまう。

 それより話のつづきが気になった。

 この時代、電話が家にある人間なんて、ほとんどいない。
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