「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
 



 その日、晃太郎たちは、池田に都合がつくのなら、ちょっと来ないかと言われた。

 池田の父親が老舗の料理屋を予約していたのだが、予定が変更になったので、お前、友だちでも連れていってこいと言われたらしいのだ。

 池田は人が良く、気まぐれだ。

「おおそうだ。
 もういいだろう。

 あの珠子とかいう娘を返してくれ」
と言い出さないかと晃太郎は、ひやひやしながら食事をしていた。

 開け放たれた障子の向こうに石橋のかかった池がある。

 季節によっては藤の花が石橋の上に咲き乱れていて美しいとかいうその庭をみんな褒めそやしていたが、まったく視界に入ってこなかった。

 池田から目が離せなかったからだ。

 そして、刺客はいきなり後ろから撃ってきた。

 高平が珠子の話をはじめたのだ。

 高平としては、ここらでハッキリさせた方がスッキリするだろうと思ってのことだったようだが。

 自分の気持ちもよくわからないのに、スッキリしようもない、と思っていた晃太郎はあまり話に入らず、聞いていた。
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