「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
その後、ついに妹と話せて安心したのか。
高平は長年大事に握りしめていたという、八の書かれた紙をなくしたらしい。
「もしかして、本に挟んだまま売ってしまったかもっ」
青ざめる高平に珠子は言った。
「きっとあの紙はもう、その役割を終えたんですよ」
「でも、あれを見て、誰か怪しい奴が電話をかけてきたら……」
「八って数字見て、電話番号だと思うか? 普通」
と晃太郎が眉をひそめる。
「うちに売ってくださったら、確認してから買い取りましたのに。
まあ、お兄様が読むような本を読む人に、悪い人いませんよ、きっと」
「……ずっとあれを大事に握りしめてたんだ」
そんなことを高平は語り出す。