望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
「はっきりお聞きしますけれど……マチルダ様はハビエル様の事が、お好きなんですよね? 彼へ近づくなと、私へまるで脅すような言葉を使っているのも、そういう事ではないのですか?」

 顔を怒りで真っ赤にしたマチルダ様は、私へと指を差して言った。

「伯爵令嬢ごときが、私に逆らうなんて!! ……絶対に許せないわ!」

「では、私は『王家の影』の私的利用を、国王陛下へ進言を。自分の護衛として派遣されている彼らを、ハビエル様への嫌がらせに使われていると知れば、どう思われるでしょうね」

 ここで、マチルダ様は息を呑んで動きを止めた。まさか、何も知らないと思っていた私が、こんな事を言い出すとは思わなかったはず。

 私だってハビエル様のお邸で、悠々自適に暮らしていたという訳ではなかった。こうした何かの時に使える情報を、頼りになる従兄弟エリアスにお願いして秘密裏に集めていた。

 エリアスが言うには『王家の影』は、配属された王族の命令は絶対。そして、職務上の情報は秘密厳守とされている。

< 116 / 138 >

この作品をシェア

pagetop