望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
それは、私が生まれ育った特殊な家庭環境に原因があった。
私のお母様は若い頃に王妃様直属の女騎士団の団長として名を馳せた人で、現在のアヴェルラーク伯爵邸で働いているのは、そんな女騎士団を引退した昔の部下が多い。
つまり、娘の私の護衛にも家庭教師にも元女騎士が付き、男性はほとんど居ない。母は不在がちな父の代わりに伯爵家を切り盛りせねばならず、信頼の置ける元部下が居てくれるのならば、その方が良いだろうと考えていたようだ。
職業柄男性が多いはずのシェフも庭師も、母の元部下で構成され、さながら我がアヴェルラーク伯爵家は結婚を選ばなかった元女騎士の、優良な再就職先のようになっていたのだ。
そして、私は周囲はほぼすべて女性という環境で育ち……異性と話すことも、触れ合うこともあまりなかった。
「……そっ……そうなの? けれど、異性と話せなければ、とても困ることになるわね。だって、恋愛をするにしても、結婚相手として見定めるにしても、何よりも会話が大事だもの……」
正直者のイザベラのその通りでしかない鋭利な言葉は、私の胸にグサリと突き刺さった。
私のお母様は若い頃に王妃様直属の女騎士団の団長として名を馳せた人で、現在のアヴェルラーク伯爵邸で働いているのは、そんな女騎士団を引退した昔の部下が多い。
つまり、娘の私の護衛にも家庭教師にも元女騎士が付き、男性はほとんど居ない。母は不在がちな父の代わりに伯爵家を切り盛りせねばならず、信頼の置ける元部下が居てくれるのならば、その方が良いだろうと考えていたようだ。
職業柄男性が多いはずのシェフも庭師も、母の元部下で構成され、さながら我がアヴェルラーク伯爵家は結婚を選ばなかった元女騎士の、優良な再就職先のようになっていたのだ。
そして、私は周囲はほぼすべて女性という環境で育ち……異性と話すことも、触れ合うこともあまりなかった。
「……そっ……そうなの? けれど、異性と話せなければ、とても困ることになるわね。だって、恋愛をするにしても、結婚相手として見定めるにしても、何よりも会話が大事だもの……」
正直者のイザベラのその通りでしかない鋭利な言葉は、私の胸にグサリと突き刺さった。