望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
 ものすごく特別な存在に見えてしまうのは……私が彼の事を好きになったからかも、しれないけれど。

「シャーロット! 大丈夫か? ……ロイクに襲われなかったか!?」

 慌ててこちらに向かって来つつ放たれた一声に、私はその場で転けそうになった。

 ……逆です! 逆です~! ロイクさんからは襲われるどころか、色々助けて貰いました~!

「良かった。心配していた」

 私は素早く近づいてきて顔を覗き込んだハビエル様へ、自分が無事であることを示すように何度か頷いた。距離が近い~!

 嫌ではないけど、恥ずかしいよ~!

「……馬車の道筋が違っておりましたので、捕縛される危険を事前に防ぐためにシャーロット様と共に飛び降りました。追っ手に見つかる事を恐れ、ここで身を潜めておりました。検分したところ怪我などはございませんが、打ち身などの可能性もありますので医師の診察を受けた方が良いと思います」

 ハビエル様の妙な心配を完全無視して、ロイクさんは淡々と現状報告をした。

「姿を見たか」

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