忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
16話 落下
「任せろっ!重力魔法【フロート】」
魔力が体を包む感覚がする。落下速度が緩やかになった、それでも落下は完全には止まらない。
ヴィシャスは自分の体を盾にするように庇う。厚い胸板と筋肉質な腕の間に挟まれる。
やがて底へ到達。
ドンッ! 地面に激突、土埃が舞う。彼が下敷きになり、私を守っていた。辺りは暗く、魔鉱石の微かな青い光が周囲を照らす。鉱山の底らしく、岩だらけで空気は冷たく湿っていた。
私達だけでなく聖騎士ブグラー配下の騎士も崩落に巻き込まれ地面に落ちていた。……ガルフの姿はない。どうやら崩落からちゃんと逃れられたようだ。
「ヴィシャス!」
彼の腕の中から這い出て、容態を確かめる。
ヴィシャスは仰向けに倒れ、血まみれだ。太刀が傍らに落ち、黒いコートは破れている。身体中に矢による負傷、息が浅い。死にそうなほどにボロボロだ。重力魔法で軽減していたけど、庇ったせいで落下ダメージも小さくない。
「あ……あ……あぁ……ごめん、ごめんなさいヴィシャス……」
私が足手纏いだったんだ……私さえいなければヴィシャスが矢で重傷を負うことも、聖騎士に落下させられることもなかった。罪悪感に圧し潰されながら治癒魔法をかける。緑の光が指先から溢れ、傷を治し始めるがダメージが多すぎて治しきれない。
「そんな……」
ついに魔力が空になり、緑の光が消える。
どうしよう……このままじゃヴィシャスが死んじゃう……。
「っっ、……無事か、ヴェルゼ」
彼が目をゆっくり開く。痛みに顔を歪め弱々しく笑う。
「無事なんかじゃ……ない、 あなた…こんなに傷ついて…… なんで私なんか……」
私に……庇ってもらうなんて……そんな価値なんてないのに。
「あんたはオレの女になる……予定…だからな。それに仲間は家族だ……守るのなんて当たり前だってェの……」
「でも……こんな、私のせいで」
まだ流れ続ける血から目が離れない。地面に血だまりが出来ていた。
「へっ、ちっげェよ。身体ぁ張るのはオレの役目だ、あんたじゃねぇ。謝るのはオレの方だ。悪りぃなぁ……こんな目に遭わせちまって」
「そんなの……」
「気にすんな、こんなのはかすり傷だ。少しすりゃぁ治るぜ。げほっげほっ。へへっそれに吊り橋効果ってやつ?オレに惚れたんじゃねぇ?げほっ」
血の混じった咳をしていた。それなのに私を安心させようと軽く調子で不敵に笑って見せている。
「…………バカ」
強がるヴィシャスだったが、限界であることは明確だ。
「…………」
彼を助けたい。力になりたい。死なせたくない。
心からそう願った。自分が監禁され、ついに処刑執行が決まった時でさえ祈らなかった神に祈る。
お願いします……どうか私に彼を助ける力を……。
「!」
胸元の魔痕が黒く輝いていた。
「え、こ、これって……?」
身体の奥から力が湧き上がる。今ならば何でも出来てしまいそうだ。無限に魔力が溢れて止まない。
「今の、この力なら……」
再び手をヴィシャスの身体に当てる。
「ふぅーーーーーー」
深く息を吐き呼吸を整える。動揺はもうない、自分のやるべきことはわかっていた。
自然と頭に浮かんだ呪文を唱える。
「古代魔法【アオフヴァッヘン】」
手から漆黒の光が放たれヴィシャスの身体を包む。
魔力が体を包む感覚がする。落下速度が緩やかになった、それでも落下は完全には止まらない。
ヴィシャスは自分の体を盾にするように庇う。厚い胸板と筋肉質な腕の間に挟まれる。
やがて底へ到達。
ドンッ! 地面に激突、土埃が舞う。彼が下敷きになり、私を守っていた。辺りは暗く、魔鉱石の微かな青い光が周囲を照らす。鉱山の底らしく、岩だらけで空気は冷たく湿っていた。
私達だけでなく聖騎士ブグラー配下の騎士も崩落に巻き込まれ地面に落ちていた。……ガルフの姿はない。どうやら崩落からちゃんと逃れられたようだ。
「ヴィシャス!」
彼の腕の中から這い出て、容態を確かめる。
ヴィシャスは仰向けに倒れ、血まみれだ。太刀が傍らに落ち、黒いコートは破れている。身体中に矢による負傷、息が浅い。死にそうなほどにボロボロだ。重力魔法で軽減していたけど、庇ったせいで落下ダメージも小さくない。
「あ……あ……あぁ……ごめん、ごめんなさいヴィシャス……」
私が足手纏いだったんだ……私さえいなければヴィシャスが矢で重傷を負うことも、聖騎士に落下させられることもなかった。罪悪感に圧し潰されながら治癒魔法をかける。緑の光が指先から溢れ、傷を治し始めるがダメージが多すぎて治しきれない。
「そんな……」
ついに魔力が空になり、緑の光が消える。
どうしよう……このままじゃヴィシャスが死んじゃう……。
「っっ、……無事か、ヴェルゼ」
彼が目をゆっくり開く。痛みに顔を歪め弱々しく笑う。
「無事なんかじゃ……ない、 あなた…こんなに傷ついて…… なんで私なんか……」
私に……庇ってもらうなんて……そんな価値なんてないのに。
「あんたはオレの女になる……予定…だからな。それに仲間は家族だ……守るのなんて当たり前だってェの……」
「でも……こんな、私のせいで」
まだ流れ続ける血から目が離れない。地面に血だまりが出来ていた。
「へっ、ちっげェよ。身体ぁ張るのはオレの役目だ、あんたじゃねぇ。謝るのはオレの方だ。悪りぃなぁ……こんな目に遭わせちまって」
「そんなの……」
「気にすんな、こんなのはかすり傷だ。少しすりゃぁ治るぜ。げほっげほっ。へへっそれに吊り橋効果ってやつ?オレに惚れたんじゃねぇ?げほっ」
血の混じった咳をしていた。それなのに私を安心させようと軽く調子で不敵に笑って見せている。
「…………バカ」
強がるヴィシャスだったが、限界であることは明確だ。
「…………」
彼を助けたい。力になりたい。死なせたくない。
心からそう願った。自分が監禁され、ついに処刑執行が決まった時でさえ祈らなかった神に祈る。
お願いします……どうか私に彼を助ける力を……。
「!」
胸元の魔痕が黒く輝いていた。
「え、こ、これって……?」
身体の奥から力が湧き上がる。今ならば何でも出来てしまいそうだ。無限に魔力が溢れて止まない。
「今の、この力なら……」
再び手をヴィシャスの身体に当てる。
「ふぅーーーーーー」
深く息を吐き呼吸を整える。動揺はもうない、自分のやるべきことはわかっていた。
自然と頭に浮かんだ呪文を唱える。
「古代魔法【アオフヴァッヘン】」
手から漆黒の光が放たれヴィシャスの身体を包む。