忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
18話 覚醒
「アニキ!!」
傷ついたガルフが叫ぶ。私は戦闘に巻き込まれないよう採掘場の隅に隠れていた。
大変だ、彼も倒れている連絡員の人も軽傷には見えない。
「なっ!何だとぉ!?貴様は死んだはずっ」
「何だ、あの化け物は……?」
「嘘だろ…竜人……?」
異形の戦士の登場に騎士達が動揺し、後ずさる。
ヴィシャスがゆっくり降下し、地面に着地。
「リベンジマッチだ。全員まとめてかかってこい」
ヴィシャスが手招きし挑発している。
「殺せぇェ!!」
「ヒャォ♪」
号令を合図に騎士団と竜の戦士が激突する。
私は戦場の隅に隠れながらガルフに近づく、彼等を癒すためだ。
「あ、姐さん……アニキの姿、どうしたんですかい?」
私の姿に気付いたガルフがヴィシャスの変容を尋ねてくる。
「詳しくは……わからないの……魔痕が輝いて……頭に浮かんだ詠唱を唱えたら、彼があの姿に……」
治癒魔法を使いながら答える。今は魔痕の漆黒の光は収まっている。あの時にあった力が今はない。でも幸いなことに今の私でも彼等を治療することは十分できそうだった。
「でも……今のヴィシャスは誰にも負けない……と思う」
それだけは確信がある。
「はっはっはっはぁ!!重力魔法【グラビティ・ボール】」
ヴィシャスが魔法を詠唱。黒色の球体が誕生すると騎士の群れに突っ込む。重力球は引力を発揮し騎士達を吸い寄せる。
「ぐおっおおおおお!?何だこれは!?」
「弾けな」
球体が爆発、重力場が吹き荒れ鎧を身に着けた騎士が枯葉のように方々に吹き飛ぶ。まだヴィシャスは止まらない。
まだ残っている複数の騎士に手を差し向ける。
「重力魔法【ディセント】」
ドゴンッッッッッッッッ!!!
何度か見た魔法。だが威力が桁違い。
上方向から降りかかる重力が騎士の頭上に落ち、鎧ごと地面に叩きつけられる、だけではない。それでもなお降り注ぐ重力が地面を割り騎士を地面へ埋めていた。採掘場に重量による深い穴ができる。
「……ヒュー♪やるな。さっすが聖騎士様だぜ」
しかし、ヴィシャスの重力に耐えきる人間がいた。片膝をつき大槌を掲げたブグラーだ。彼は重力魔法【ディセント】の直撃を受けてなお意識を保っている。
「ぐぐ、おのれェ賊めが」
しかし、配下の騎士は壊滅状態。ブグラーは歯軋りする。
「好き勝手できる思うなであーる」
「こっちのセリフであーる、ってなぁ!」
「大地魔法【マス・ロック】」
「お?」
ブグラーの持った大槌の先に岩石が集まる。ただでさえ巨大だった大槌が岩石を纏ったことで更に膨れ上がっている。家屋でさえたやすく砕いてしまいそうな大きさだ。
「くくっ!一撃で大型魔獣を地面の染みにさせたこともある我が奥義であーる!」
自慢げに圧倒的質量の武器をグルングルン、と振り回す。
「ほーん?そりゃすげェ」
ニヤリとヴィシャスが笑う。
「余裕をかましていられるのはいまのうちだけであーる!!!死ねぇい!」
大質量の岩石塊がヴィシャスに振り下ろされる。
「……え?ちょっとヴィシャス!?」
私は思わず声を出してしまった。彼が回避も防御もすることなくその場で突っ立ったままだった。
ゴスッッッ、鈍い音を立てて岩石塊が頭部に命中する。ぱらぱらと岩石塊から砂ぼこりが舞う。
「くくっ」
ブグラーが笑う。
「くくくっ…………っぐ!?んぬぅんん!?」
笑みが止まる直撃を受けたヴィシャスが微動だにせず屹立したままだったからだ。
「ま、こんなもんか」
大槌の先に装着された岩石塊に縦一直線ヒビが入る。
ピシッピシピシィ、裂け目はどんどんと深く広く走り、一周すると岩石は真っ二つに砕け散った。
ヴィシャスは何もしていない。ただ頭部で攻撃を受けただけ。肉体の頑強さだけで岩石を砕いたのだ。
「な!?な!?な!?」
目の前の光景が信じられない。ブグラーは言葉を失っている。
「じゃーーこっちの番だな。いっくぜェェェェェェ!!」
ヴィシャスが握り拳をつくると腕を回していた。
「ま、待て……」
「おっせぇよぉ!」
硬く握られた拳がブグラーの顔面に吸い込まれる。
「ぼぎゃっっっっ」
殴り飛ばされた聖騎士は壁に激突、それでも勢いは止まらず壁を突き破りどこかへ飛び姿は見えなくなった。
「しゃあっ!大勝ーー利!」
私に向かってVサイン。完全に決着はついていた。
鉱山町での決戦、勝ったのはヴィシャス。
「あれ?抱き着いてこねーの?」
あまり調子に乗らないで欲しい。
彼がヘラヘラしたいつもの軽い調子で私達の方へ歩いて来る。
「おっと」
躓き倒れはじめた。
「えぇっ!」
私は慌てて駆け寄って彼の身体を支えて抱き留める。
「大丈夫なの…?」
「あぁ…問……題ね、え……ん、すぅーーー」
竜人と化していた肉体が元に戻っている。ケガはなさそうだが疲労が限界に達したのだろう。穏やかに寝息を立て始めていた。
「…………お疲れ、ヴィシャス」
私は彼が起きないよう優しく地面に寝かせ膝枕をしてあげた。燃える赤髪を整えるように撫でる。
まぁ今日くらい、頑張った彼にしてあげても罰は当たらないでしょ。
傷ついたガルフが叫ぶ。私は戦闘に巻き込まれないよう採掘場の隅に隠れていた。
大変だ、彼も倒れている連絡員の人も軽傷には見えない。
「なっ!何だとぉ!?貴様は死んだはずっ」
「何だ、あの化け物は……?」
「嘘だろ…竜人……?」
異形の戦士の登場に騎士達が動揺し、後ずさる。
ヴィシャスがゆっくり降下し、地面に着地。
「リベンジマッチだ。全員まとめてかかってこい」
ヴィシャスが手招きし挑発している。
「殺せぇェ!!」
「ヒャォ♪」
号令を合図に騎士団と竜の戦士が激突する。
私は戦場の隅に隠れながらガルフに近づく、彼等を癒すためだ。
「あ、姐さん……アニキの姿、どうしたんですかい?」
私の姿に気付いたガルフがヴィシャスの変容を尋ねてくる。
「詳しくは……わからないの……魔痕が輝いて……頭に浮かんだ詠唱を唱えたら、彼があの姿に……」
治癒魔法を使いながら答える。今は魔痕の漆黒の光は収まっている。あの時にあった力が今はない。でも幸いなことに今の私でも彼等を治療することは十分できそうだった。
「でも……今のヴィシャスは誰にも負けない……と思う」
それだけは確信がある。
「はっはっはっはぁ!!重力魔法【グラビティ・ボール】」
ヴィシャスが魔法を詠唱。黒色の球体が誕生すると騎士の群れに突っ込む。重力球は引力を発揮し騎士達を吸い寄せる。
「ぐおっおおおおお!?何だこれは!?」
「弾けな」
球体が爆発、重力場が吹き荒れ鎧を身に着けた騎士が枯葉のように方々に吹き飛ぶ。まだヴィシャスは止まらない。
まだ残っている複数の騎士に手を差し向ける。
「重力魔法【ディセント】」
ドゴンッッッッッッッッ!!!
何度か見た魔法。だが威力が桁違い。
上方向から降りかかる重力が騎士の頭上に落ち、鎧ごと地面に叩きつけられる、だけではない。それでもなお降り注ぐ重力が地面を割り騎士を地面へ埋めていた。採掘場に重量による深い穴ができる。
「……ヒュー♪やるな。さっすが聖騎士様だぜ」
しかし、ヴィシャスの重力に耐えきる人間がいた。片膝をつき大槌を掲げたブグラーだ。彼は重力魔法【ディセント】の直撃を受けてなお意識を保っている。
「ぐぐ、おのれェ賊めが」
しかし、配下の騎士は壊滅状態。ブグラーは歯軋りする。
「好き勝手できる思うなであーる」
「こっちのセリフであーる、ってなぁ!」
「大地魔法【マス・ロック】」
「お?」
ブグラーの持った大槌の先に岩石が集まる。ただでさえ巨大だった大槌が岩石を纏ったことで更に膨れ上がっている。家屋でさえたやすく砕いてしまいそうな大きさだ。
「くくっ!一撃で大型魔獣を地面の染みにさせたこともある我が奥義であーる!」
自慢げに圧倒的質量の武器をグルングルン、と振り回す。
「ほーん?そりゃすげェ」
ニヤリとヴィシャスが笑う。
「余裕をかましていられるのはいまのうちだけであーる!!!死ねぇい!」
大質量の岩石塊がヴィシャスに振り下ろされる。
「……え?ちょっとヴィシャス!?」
私は思わず声を出してしまった。彼が回避も防御もすることなくその場で突っ立ったままだった。
ゴスッッッ、鈍い音を立てて岩石塊が頭部に命中する。ぱらぱらと岩石塊から砂ぼこりが舞う。
「くくっ」
ブグラーが笑う。
「くくくっ…………っぐ!?んぬぅんん!?」
笑みが止まる直撃を受けたヴィシャスが微動だにせず屹立したままだったからだ。
「ま、こんなもんか」
大槌の先に装着された岩石塊に縦一直線ヒビが入る。
ピシッピシピシィ、裂け目はどんどんと深く広く走り、一周すると岩石は真っ二つに砕け散った。
ヴィシャスは何もしていない。ただ頭部で攻撃を受けただけ。肉体の頑強さだけで岩石を砕いたのだ。
「な!?な!?な!?」
目の前の光景が信じられない。ブグラーは言葉を失っている。
「じゃーーこっちの番だな。いっくぜェェェェェェ!!」
ヴィシャスが握り拳をつくると腕を回していた。
「ま、待て……」
「おっせぇよぉ!」
硬く握られた拳がブグラーの顔面に吸い込まれる。
「ぼぎゃっっっっ」
殴り飛ばされた聖騎士は壁に激突、それでも勢いは止まらず壁を突き破りどこかへ飛び姿は見えなくなった。
「しゃあっ!大勝ーー利!」
私に向かってVサイン。完全に決着はついていた。
鉱山町での決戦、勝ったのはヴィシャス。
「あれ?抱き着いてこねーの?」
あまり調子に乗らないで欲しい。
彼がヘラヘラしたいつもの軽い調子で私達の方へ歩いて来る。
「おっと」
躓き倒れはじめた。
「えぇっ!」
私は慌てて駆け寄って彼の身体を支えて抱き留める。
「大丈夫なの…?」
「あぁ…問……題ね、え……ん、すぅーーー」
竜人と化していた肉体が元に戻っている。ケガはなさそうだが疲労が限界に達したのだろう。穏やかに寝息を立て始めていた。
「…………お疲れ、ヴィシャス」
私は彼が起きないよう優しく地面に寝かせ膝枕をしてあげた。燃える赤髪を整えるように撫でる。
まぁ今日くらい、頑張った彼にしてあげても罰は当たらないでしょ。