忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
3話 傭兵団アジトへ
「えー、ゴホン…まぁまぁまぁ、追々仲良くなってから再び求婚すれば良いじゃろう」
そうウサギの獣人が強引に締めくくると馬車で彼等のアジトへ向かうことになった。人里離れた山間にあるらしい。
行くまでの道中に何故、私が牢から助けられ(攫われ?)ることになったか彼女から説明を受けている所である。ちなみにウサギ型獣人である彼女はラビィル、大柄なオオカミ型獣人はガルフ、神経質そうな尖った耳の男はナイゼルと名乗った。やはり傭兵団【赤竜の覇団】の仲間だった。
私に振られたヴィシャスは落ち込み、馬車の隅で膝を抱えて配下の男2人に慰められている。存外、言動や外見に反してナイーブなのかもしれない。何だかこちらが悪いことをした気分になる。
どう考えても人攫いの悪党は彼の方なのだが……。
「魔痕って不吉の象徴って聞いていたのだけれど…何であなた達は私を欲しがるの?」
慰めるのもおかしいためヴィシャスは放っておいて、今更ながら当然の疑問をぶつける。
これまで発言から察するに魔痕が目的であるように思われた。何故、欲しがるのだろう?忌避する人ばかりじゃないのかな?
「人間にとってはな。儂らみたいな獣人や魔人と呼ばれる亜人族にとっては福音なんじゃよ」
ラビィルさんは隠し立てすることなく疑問に全て答えてくれる。まともに話せる人?がいてくれて良かった。厳つい男ばかりの中でふわふわなウサギさんの彼女に癒されるなぁ。
「福音?」
そんなこと言われたことないけど……。
「うむ、何故人間のヌシに魔痕が刻まれたかは分からぬが……それを持って生まれた雌とツガイになった亜人は絶大な力を得られて大陸の覇者となる、と言い伝えられておるのじゃ」
「へ、へー」
イマイチ実感が湧かない。私にとっては厄介者扱いされる原因となったいらない痣でしかなかった。ただの言い伝えでしかないように思える。
そもそも私は普通の魔法すら使えない。特別な力なんて持っていないのだ。誤解なきようラビィルさんにもそう教える。あとから話が違うと元いた牢屋に戻されても困るからだ。
「そうじゃの、ただの言い伝えでしかないかもしれん」
やっぱり……。
「だがそれを信じる者がいる、ということが重要なのじゃ」
「?」
私がまだ理解していないことを察してか追加で説明を加えてくれる。
「権威、箔が付く。つまり亜人や人間に対してヌシの夫となったものが支配者を主張するに足る正当性を曲りなりにも得られるんじゃよ。例え本当にただの娘っ子に過ぎないとしてもな」
なるほど、わかったような…わからないような…?
「監禁されて育ったヌシは世情に疎い。知らぬであろうがこの国…サングリア帝国では亜人は被差別階級なのじゃ。人間の奴隷は禁止されておっても獣人の奴隷は禁止されておらん」
ラビィルさんの表情は変わらないけれどきっと今までに色々なことがあったことが窺える重い口調だった。
「……………」
そんなことは全く知らなかった。絵本では人間と獣人が仲良く暮らす描写もあったのだが……。外の世界は亜人にとって住み心地の良いものではないみたい。
「奴隷でなくとも要職にはつけず鉱山労働等の危険な仕事を押し付けられ、皆一様に苦境に立たされておる獣人がほとんどじゃ…」
ここでラビィルさんが未だに肩を落として落ち込んでいるヴィシャスの方を見た。
「亜人の立場を向上させるために傭兵団を組織しておった儂はある日、希望に出会う。幼き頃のヴィシャスじゃ」
そうウサギの獣人が強引に締めくくると馬車で彼等のアジトへ向かうことになった。人里離れた山間にあるらしい。
行くまでの道中に何故、私が牢から助けられ(攫われ?)ることになったか彼女から説明を受けている所である。ちなみにウサギ型獣人である彼女はラビィル、大柄なオオカミ型獣人はガルフ、神経質そうな尖った耳の男はナイゼルと名乗った。やはり傭兵団【赤竜の覇団】の仲間だった。
私に振られたヴィシャスは落ち込み、馬車の隅で膝を抱えて配下の男2人に慰められている。存外、言動や外見に反してナイーブなのかもしれない。何だかこちらが悪いことをした気分になる。
どう考えても人攫いの悪党は彼の方なのだが……。
「魔痕って不吉の象徴って聞いていたのだけれど…何であなた達は私を欲しがるの?」
慰めるのもおかしいためヴィシャスは放っておいて、今更ながら当然の疑問をぶつける。
これまで発言から察するに魔痕が目的であるように思われた。何故、欲しがるのだろう?忌避する人ばかりじゃないのかな?
「人間にとってはな。儂らみたいな獣人や魔人と呼ばれる亜人族にとっては福音なんじゃよ」
ラビィルさんは隠し立てすることなく疑問に全て答えてくれる。まともに話せる人?がいてくれて良かった。厳つい男ばかりの中でふわふわなウサギさんの彼女に癒されるなぁ。
「福音?」
そんなこと言われたことないけど……。
「うむ、何故人間のヌシに魔痕が刻まれたかは分からぬが……それを持って生まれた雌とツガイになった亜人は絶大な力を得られて大陸の覇者となる、と言い伝えられておるのじゃ」
「へ、へー」
イマイチ実感が湧かない。私にとっては厄介者扱いされる原因となったいらない痣でしかなかった。ただの言い伝えでしかないように思える。
そもそも私は普通の魔法すら使えない。特別な力なんて持っていないのだ。誤解なきようラビィルさんにもそう教える。あとから話が違うと元いた牢屋に戻されても困るからだ。
「そうじゃの、ただの言い伝えでしかないかもしれん」
やっぱり……。
「だがそれを信じる者がいる、ということが重要なのじゃ」
「?」
私がまだ理解していないことを察してか追加で説明を加えてくれる。
「権威、箔が付く。つまり亜人や人間に対してヌシの夫となったものが支配者を主張するに足る正当性を曲りなりにも得られるんじゃよ。例え本当にただの娘っ子に過ぎないとしてもな」
なるほど、わかったような…わからないような…?
「監禁されて育ったヌシは世情に疎い。知らぬであろうがこの国…サングリア帝国では亜人は被差別階級なのじゃ。人間の奴隷は禁止されておっても獣人の奴隷は禁止されておらん」
ラビィルさんの表情は変わらないけれどきっと今までに色々なことがあったことが窺える重い口調だった。
「……………」
そんなことは全く知らなかった。絵本では人間と獣人が仲良く暮らす描写もあったのだが……。外の世界は亜人にとって住み心地の良いものではないみたい。
「奴隷でなくとも要職にはつけず鉱山労働等の危険な仕事を押し付けられ、皆一様に苦境に立たされておる獣人がほとんどじゃ…」
ここでラビィルさんが未だに肩を落として落ち込んでいるヴィシャスの方を見た。
「亜人の立場を向上させるために傭兵団を組織しておった儂はある日、希望に出会う。幼き頃のヴィシャスじゃ」