第二作★血文字の囁き★
第一作★血文字の残響★
 📖 第一作:血文字の残響

 プロローグ

 山間の集落、神ノ谷(かんのや)村。
 かつてここで、ひとつの一家が忽然と姿を消した。
 事件は「一家心中」「夜逃げ」などと噂されたが、結局は迷宮入りのまま、二十年の歳月が流れている。

 廃屋となった神谷家の壁や床には、いつしか奇怪な「血文字」が浮かぶようになった。
 「ゆるして」「ごめんなさい」「たすけて」――。
 その文字は誰が、いつ、どのように刻んだのか、誰も答えられない。

 夏の終わり、地方紙の記者・相澤真一は、取材のため神ノ谷を訪れる。
 過去の残響に導かれるように、彼は廃屋の奥で一文を目にする。

 「ほんとうのはんにんは――」

 それは、封印されていたはずの惨劇の扉を開く合図だった。


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 登場人物

 ◆ 相澤 真一(あいざわ しんいち) ― 主人公

 地方新聞社の記者、38歳。

 冷静沈着だが、真実を追う執念深さを持つ。

 かつて若手時代に神ノ谷事件を取材しかけたが、編集部の方針で断念している。

 今回、20年ぶりに村を訪れ「残響」と対峙する。



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 ◆ 神谷 美鈴(かみや みすず) ― 行方不明の少女

 20年前、失踪した神谷家の一人娘(当時10歳)。

 明るく元気な性格だったと村人は語る。

 廃屋に現れる血文字は、彼女の声とも噂されている。



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 ◆ 神谷 達夫(かみや たつお) ― 少女の父

 村の土建業者。借金を抱えていたという噂が残る。

 失踪直前、酒に酔って暴れる姿を目撃された。

 本当に“一家心中”を図ったのか、それとも……?



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 ◆ 神谷 芙由子(かみや ふゆこ) ― 少女の母

 村の出身。夫の粗暴さを陰で支えていたが、周囲には心労を隠しきれなかった。

 廃屋に残された血文字の筆跡は、彼女のものに似ているとの証言もある。



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 ◆ 佐伯 祐介(さえき ゆうすけ) ― 元駐在警察官

 当時、事件を担当した駐在。すでに退職している。

 「一家心中の線が濃厚」と結論づけ、捜査を早々に打ち切った。

 今も村に住むが、事件について語ることを極端に嫌がる。



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 ◆ 藤川 遼(ふじかわ りょう) ― 若手記者

 相澤の後輩、25歳。

 怪談やオカルトに興味津々で、軽い気持ちで同行する。

 取材中に不可解な現象を体験し、恐怖に囚われていく。



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 ◆ 村人たち

 長老格の老人、無口な隣人、神谷家と縁の深かった人物など。

 事件については皆一様に「触れたがらない」様子を見せる。

 しかし夜になると、誰かが廃屋を訪れている形跡がある……。


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