第二作★血文字の囁き★

 ① 序章 ― 発見

 山あいの村のはずれに、一軒の廃屋がある。
 二十年前に一家が忽然と姿を消して以来、誰も近づこうとしなかった。
 夜な夜な子どもの泣き声が聞こえる、壁に赤黒い文字が浮かび上がる――そんな噂ばかりが残り、村人たちは口を揃えて「あそこは呪われている」と囁いた。

 ある朝、村の青年が肝試し半分でその廃屋を覗き込み、悲鳴を上げた。
 壁の一面に、鮮やかな赤で新たな血文字が刻まれていたのだ。

 「ゆるして」

 まるで夜のうちに誰かが書いたかのように、生々しく滲んでいる。
 村の人々が集まり、恐怖と動揺が広がった。
 「まただ」「あの一家の祟りだ」「死んだ娘が帰ってきたんだ」――。

 誰もが震えながらも、壁から目を離せなかった。
 二十年前の惨劇が、再び村に姿を現した瞬間だった。
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