制服世代
バレンタイン
二月。

部活では、バレンタインの話題で盛り上がっていた。

どうやら、本命というよりは、各々の憧れの先輩たちにあげようか、といった雰囲気のようだが。

「英玲奈はどうすんの?」

「え?私は別に誰にも渡さないよ」

「ふーん。最近、なんかちょっと秘密主義だよね」

そう問われ、ギクリとする。

バレンタインか⋯⋯。

思えば、誰にも渡したことがない。 

父ちゃんと、毎年ゼロの哀れな兄ちゃんぐらいにしか。

目を閉じると、高峰の顔がチラチラと見える。

いやいや⋯⋯去年の春のこと思い出せ。

高峰は私のことをバカだと吐き捨てるように言った。

その後、距離は縮まったものの、優等生の高峰にしてみれば、劣等生の私なんて、アウトオブ眼中だろう。

何故か、そう思うとブルーになる。

高峰と志望校の話をしていても、案の定、御三家への進学を考えているとのこと。

「奥居は?」
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