クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 彼の言葉に、私の胸はついどくりと反応してしまった。先ほど、恋人だからと意識するのはやめようと思ったばかりなのに。
 店主さんはテーブルに手早く料理を並べると、智田SVの肩に手をのせ彼の顔を覗き込む。

「そうやって会話に入ってくるのが分かってたから、こっちに座ったんだよ。俺の気持ちも分かれ」

 智田SVはやれやれと頭を抱えた。が、店主さんはなぜか反論する。

「じゃあ、俺の意図も分かれ」

 それから、こちらを振り返った。

「彼女さん、付き合ってるのに〝店長〟って呼ばれるの、ぶっちゃけどうなんですか?」
「え?」

 急に話を振られ、きょとんとしてしまう。
 だが店主さんは人懐っこい笑みを浮かべ、こちらをじっと見てくる。その顔は、私の答えを待っているよう。

「えっと……」
「不動店長が困っている。やめてくれ」

 智田SVはそう言って、彼の肩を掴み引いた。まごつく私をかばってくれたのだろう。
 だけど、いい機会かもしれないと思う自分もいる。智田SVと、距離を縮めたい。もっと、恋人の距離にいたい。

 店主さんに言うのなら、言ってもいいだろうか。そんな邪な思考で、私はそっと口を開いた。

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