クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 智田SVはその後も仕事の話を振ってくる。

「不動店長は、今後の目標はあるのか? モデル店舗としての成功が目下の目標ではあると思うのだが、その先のことも」
「その先……」

 私は頭を切り替えて、未来の自分の姿を思い浮かべた。

 脳裏に浮かぶのは、本部で働く自分の姿だ。そこにいる私は、色々な店舗を巡り、その地域に根差した売場を提案している。幼い頃の自分が体験したような、楽しい買い物ができる売場を全国に作っている。
 だけど――。

(このまま今の店舗にいたいとも思うんだよね。今まで散々現場の人だと言われてきたし、それに今はモデル店舗の行く先をちゃんと見たいとも思ってる)

 どちらかに決めるのは私だ。だから、智田SVには悩んでいることを見抜かれたくない。
 私は本意は濁しつつ、口を開いた。

「今は目下のことでいっぱいっぱいです。とにかく、モデル店舗を成功させなくちゃいけないなって、そればっかりで」

 苦笑いを浮かべると、智田SVは「そうか、分かった」と頷いてくれた。

 すると突然、私たちの間に陽気な声が割り込んでくる。

「茉寛、付き合いたてなのに色気のない話してるんだな」

 店主さんが頼んだ品を手に、こちらにやってきたのだ。

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