クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 そろそろ日付を越えるというところで、私たちはSOUTH RIVERを出た。

 お店の前で、智田SVが配車してくれたタクシーを並んで待つ。ほんのり酔った体に、夏の夜風が優しく吹きつけている。

「悪かった。まさか、晃大があんなに話に突っ込んでくるとは思わなかった」

 智田SVはそう言うと、右手で軽く頭を抱えた。

「いえ、楽しかったですよ?」

 彼を見上げそう言うと、彼は右手を下ろして私に優しく微笑む。

「そうか。なら、よかった」

 こんなに甘い彼の顔は、私しか知らないだろう。胸が高鳴ると同時に、ちょっとした優越感が胸にやって来る。

(好きだなあ)

 しみじみと、そう思った。
 上司として尊敬できて、かっこいい。男性としても、私を大切にしてくれる。こんなに素敵な人と、恋人だなんて。
 つい頬が緩んでしまいそうになるが、そんなだらしない顔はできない。私は表情筋を引き締め、彼を見上げた。

 夏の夜の虫たちが鳴いている。智田SVは、じっと前を見つめていた。

 静かな夜にふたりきり。恋人同士なのだと思うと、彼ともっと近づきたいと思ってしまう。
 だけど、それはきっと私たちらしくない。それに、彼に伝えて嫌われたくはない。

 ぐっと気持ちを抑え込み、寂しさをごまかす。すると、不意に智田SVが口を開いた。

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