クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「好きだったんだよ、どうしようもなく。前にも言っただろう、好きな人の前ではドジしてしまう性分なんだ。俺がドジをするのは、俺が里咲のことを好きだという証拠だ」

 彼の言葉を聴きながら、思い出すのは売場改変案が本部を通ったと話してくれた時のことだ。

(つまり、あの時からもう智田SVは私を……)

 そう思ったが、それは言わないでおく。
 代わりについ頬が緩んでしまうが、彼はそんな私の顎を再びすくい上げた。

「今は、今の俺を見て欲しい」

 じっと見つめる彼の、優しい眼差し。
 はち切れそうなほどの心臓の高鳴りと同時に、彼を好きだという気持ちがあふれ出す。

「好きです、茉寛さん」

 もう、本心を隠さなくていい。そう思いながら彼に告げる。

「俺もだ、里咲」

 彼の言葉を聞きながら、そっと目を瞑り顔を近づける。すると、彼の優しいぬくもりが降ってきた。

 今度は彼の唇は、すぐに離れていってしまったけれど。

「今夜は、ずっと一緒にいてもいいんだよな」

 茉寛さんの言葉にこくりと頷くと、彼は私の手をそっと取り、ベッドルームまでいざなった。

 この夜、私たちの関係がぐっと近づいたのは、言うまでもない。

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