クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「でも、『かわいい』というのはそのままの意味ではなくて、いつもはかっこいいからそう思ってしまうというか、ギャップにぐっとくるというか、つまり茉寛さんは私にとって――」

 最後まで言えなかった。突如、彼の両腕が私を包み込んだのだ。

 唐突のゼロ距離に、鼓動が激しく暴れだす。
 彼の腕の力は強い。されるがまま抱きしめられ、全身が猛烈に熱くなる。

「あ、あの……」

 なんとかそう声を出し、顔を上げる。
 彼は今まで見たことがないような、幸せそうな赤面を私に向けていた。

「すまないが、離したくない」

 彼の言葉に、さらに鼓動が速くなる。すると彼は私の耳元で、そっと言った。

「里咲の言葉はつまり、いつもはかっこいいと思ってくれているということだろう? こんな俺に幻滅せずにいてくれるということだろう?」

 私は彼の腕の中で、小さくこくりと頷いた。

「幻滅なんかしません。むしろ、智田SVを意識したのも、あなたのドジがきっかけですから」

 ついそうこぼすと、智田SVはため息をひとつこぼす。

< 201 / 206 >

この作品をシェア

pagetop