クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 島崎店長に謝罪をされた後、彼女は辞表を提出した。やましいことをしてしまった気持ちで店長を続けるよりは、新天地で新たに踏み出したいそうだ。

 彼女のプレブロ辞職後、駅前店舗の店長は茉寛さんがSV業と兼任することとなり、モデル店舗についてはエリアマネージャーが引き継いでくれた。

 そこで私の働きを見たマネージャーが、茉寛さんが提案した〝店長と本部、両方での人材育成〟を聞き入れ、ぜひともと本部に推薦してくれたのだ。

(どっちつかずだった私の希望、まさかどっちもという形で叶えてくれるなんて)

 そう思っていると、廊下から結木くんの声がスタッフルームの中へ届いた。

「荷受け、お願いしまーす」

 今日も爽やかな朝。私の一日が、始まってゆく。
 荷受けへと走る真霜と田辺さんを頼もしく思いながら、私は開店の準備と同時に、本部へ赴く準備も始めた。


 一日の仕事を終え、本部を出た。するとそこで、茉寛さんが私を待っていた。

「お疲れ様、里咲」
「お疲れ様です、茉寛さん」

 彼のもとへ駆け寄る。彼は私の右手をそっと取り、そのまま歩き始めた。

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