クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 手を繋ぎたい。そう彼に伝えたのは、初めて一夜をともにした翌日だった。

 あの日、彼に心の内を伝えることの大切さを教わった。なんでも言って欲しいと言われ、伝えたかったことを全部伝えた。
 手を繋ぎたい。もっと近づきたい。図々しくないかと思いながらも話すと、彼はそんな私の希望をすぐに実行してくれた。

 自分の正直な気持ちを伝え、彼がそれに応えて行動してくれるたびに、私は愛されているのだと実感する。

「今日は部長と話したんですよ。モデル店舗みたいな店舗、もう少し増やさないかって」
「それはすごいな。里咲はこれから、忙しくなりそうだ」
「はい。でも、茉寛さんとの時間も大切にしたいと思ってます。だから、できるだけ予定を合わせましょう」

 そう言うと、私の手を握る彼の力がわずかに強くなる。そんな彼の大きな温もりが、大好きだ。

 私がずっと手に入れたかったもの。仕事も恋も順調だなんて、一年前の私に言ったらどんな反応をするだろう。

 そんなことを思っていると、不意に繋いでいた手を引かれる。振り向くと、茉寛さんが前のめりになっていた。
 ちょっとした歩道の段差に躓いたらしい。

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