クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 いつもと異なる午前の繁忙時間を終え、午後出勤のスタッフの朝礼をする。真霜に売場を引き継げは、やっと休憩時間だ。

 怒涛の午前中を無事終えられたことに安堵し、私はランチに向かう途中でミーティングルームへ寄った。
 先ほどの打ち合わせ資料を置いてきたままだし、ランチ前に施錠しなければならない。

「あれ、これ……」

 明かりをつけるとすぐ、机の上に資料のほかに黒縁の眼鏡が置いてあるのに気づいた。
 きっと智田SVのものだろう。彼がパソコン業務の時に、この眼鏡をかけているところを何度か見たことがある。

(珍しい。彼が店舗に物を忘れるなんて)

 そんなことを思いながら、ポケットから業務用のスマホを取り出す。それから予定共有アプリを開き、彼の予定を確認した。
 智田SVは、今日は駅前の店舗から直帰らしい。

(この店舗なら帰り道だし、わざわざ取りに来てもらうのも忍びない。帰宅途中に届けに行こう)

 そう思い、智田SV宛にメッセージを打ち込む。

【ミーティングルームに眼鏡をお忘れのようです。駅前店舗から直帰のようですので、お仕事が終わる頃に届けに行きます】

 ぱぱっと打ち込み送信ボタンをタップしてから、私はランチへ向かった。

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