クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
日の沈んだばかりの街は、金色に輝いて見える。足元に吹き付ける風は、冷たいけれど。
駅前店舗の入るビルの前に着くと、すぐに智田SVを見つけた。彼はチェスターコートを風に靡かせながら、手にしたタブレットに目をやっている。
街灯に照らされた彼の立ち姿は、なんだか日常を描いた絵画のよう。背が高いからか、こんなちょっとした瞬間が格好良く見える。
(いや、そんなこと考えてる場合じゃないでしょ。寒い中待っていてくれたんだから、急がないと)
軽く駆け足で彼のもとへ向かうと、彼はすぐに私に気づきタブレットを鞄にしまった。
「すみません、お待たせしてしまって」
ぺこりと頭を下げそう言うと、彼は悠然として言った。
「いや、こちらこそありがとう。わざわざ届けてもらって申し訳ない」
「いえ、帰り道ですので」
私はそう言うと、ハンカチに包んだ眼鏡を鞄から取り出し彼に手渡した。
すると、彼は鞄から自前のケースに眼鏡をさっとしまう。タブレットをしまった際に、ケースを取り出していたらしい。
さすが智田SVだ。こんな動きにすら無駄がない。
「では、お疲れ様でした」
私は再びぺこりと頭を下げた。智田SVの家は、ここからだと私の家とは反対方向だったはずだ。
「この後、少し時間あるか?」