クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない

『土日祝日だけでなく、平日午前もあの掃除ロボットの運転を控えたいです』

 湘南地域の店舗統括SVに就任して初めての、彼女との対面打ち合わせ。彼女はなにか意見はないかという自分に対して、怯むことなくそう言った。

 あの掃除ロボットというのは、店舗内の床を自動清掃しているロボットのことだ。五十センチ四方くらいの大きさのそれは、猫耳と目が付いている。かわいらしい見た目が人気の業務用掃除ロボットで、プレブロも人件費削減のために導入した。

『ベビーカー連れのお客様が、入店を遠慮してしまうんですよね。小さな子どもたちは、追いかけて危ないですし』

 この店舗らしい見解だと思った。隣にベビー用品のテナントが入り、目の前が子供の遊び場として開放されている不動の店は、キッズ・ベビー商品の売上が他店より大きいのだ。

『なら、稼働を止めてみたらいい。その分掃清掃に割く人員が必要だが、そこは調整できるだろう?』

 すると、彼女の瞳がわずかに輝いた気がした。

『はい、ありがとうございます』

 彼女はその時は淡々とそう言ったが、次の打ち合わせの時には既に平日午前の掃除ロボットの稼働を取りやめ、スタッフの行動表に清掃を組み込んでいた。
 スタッフが顧客対応で清掃に入れなくなった時には自分が動けるよう、その時間の店長業務の変更までしていた。

 彼女と会話を重ねるうちに、彼女と自分は似ていると気づいた。余計な感情を表に出さず、必要な仕事を的確にこなす。連絡や相談は欠かさない。だから、彼女の指導はやりすかった。
 しかし、彼女には智田とは圧倒的に違うところがあった。他人との壁を壊すのがうまいのだ。

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