クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
【茉寛と彼女、お似合いだと思った。頑張れ】

 そんな短い文章の下に、タコが王冠をかぶったキャラクターの〝応援してる〟スタンプが送られてくる。

【どの辺りを見てそう思った?】

 つい返信すると、すぐに返ってきた。

【お前のドジに動じないところ。笑うどころか心配してたろ? あと、うちのたこわさを好きなところ】

 動じないのはきっと呆れられているからだと思うが、確かにからかわれたりはしなかった。
 仕事になるとはっきりと意見を言うタイプだが、彼女の言動にこちらが嫌な気分になったことは一度もない。

(たこわさ好きは、関係ないだろう)

 そう思ったが、ついふたりでたこわさを箸でつつくところを想像してしまう。すると頬が緩み、胸がじんわりと温かくなった。こんな未来が訪れるなら、どれだけ幸せだろう。

(今は俺のドジに動じない不動店長の方がかっこよささえある。だが、俺が動けばなにか変わるかもしれない。たこわさをともにつつく未来が、本当に来るかもしれない)

 そんな妄想をしながら、智田はスマホを傍らに置き天井を見上げた。

『褒める、立てる、喜ばせる』

 その前に、自分にはやらなければならないことがある。

(このドジを、なんとかしなければならないな)

 彼女と並べるように。過去の過ちを繰り返さないように。
 智田は明日からこそは、努めて冷静に彼女の周りで立ち回ろうと決めた。

< 41 / 206 >

この作品をシェア

pagetop