クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「ひとりで大丈夫だよ、主役は座ってて」

 私は振り返り、そう言った。今年は彼女と智田SVの歓迎会も兼ねているのだ。

 なお、智田SVはバーベキューなのにいつものオフィスカジュアルファッションでやってきた。今は気まずそうに、ソファに座ったままお肉が焼けるのを眺めている。

「でも、一番の下っ端が動かないなんて――」

 島崎店長はそう言って、眉を八の字にする。あまり話したことはないが、きっと素直で優しい子なのだろう。なんとなく真霜と似ている気がして、私はつい背を伸ばし柔らかい笑みを浮かべた。

「だったらお願いしようかな。これとこれ、持っていってもらっていい?」

 ビールとジュースの缶を手渡すと、彼女はぱあっと笑顔の花を咲かせる。

「はい、喜んで!」

 快活な声とともに、彼女は腕に缶を抱えて席の方へ戻っていった。
 なんとなく彼女を視線で追ってしまう。島崎店長は次々と皆の要望を聞きながら、飲み物を手渡していた。子どもたちへの笑顔と配慮も欠かさない。

(店長らしい気配り。その点は私に似ているけど、素直さは敵わないなあ)

 彼女の行動を見て、つい苦笑いをこぼした。
 私は感情を内に隠してしまう。彼女のように振る舞うことができれば、かわい気もあるのだろうけれど。

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