クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(って、なに考えてるんだろう。別にいいじゃない、私には私の生き方がある)

 恋よりも、今は仕事だ。そう思い直し、私はビールとお茶を手に智田SVの方へ向かった。彼が座っているのは、島崎店長とは正反対の場所だ。

「智田SVはなに飲まれます? ノンアルもありますよ」

 彼の隣に座り声をかけると、彼はぴくりと肩を揺らしこちらを向いた。目線は、私の手元だけれど。
 そんな彼の様子に、私もつい動揺してしまう。

「では、ビールをもらう」

 彼が淡々とそう言ったので、私もなんでもないふうをして彼に缶を手渡した。

「どうぞ」
「ありがとう」

 無事彼に缶が渡り、私は内心ほっとした。
 彼の些細な行動に体が反応してしまうのは、彼のドジを思い出してしまうからだろう。

 あれからも、彼の些細なドジを目にした。手が触れそうになってペンを落としたり、背負ったリュックのファスナーが開いたままになっていたり。
 そのたびに、彼のドジをカバーすることを心がけた。できるだけ淡々と、変な反応をして彼を傷つけないように。

 今も彼が缶を取り落としたらどうしようかと、実はシミュレーションしていた。だけど、なにもないならばそれが一番良い。

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