クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(ダメダメ、今日も朝から彼が来るんだから。ふたりきりでの打ち合わせもあるから、意識しないようにしないと)

 私は気合を入れるため、勤め先まで百メートルほどあるこの場所で冬物のコートを脱いだ。

 上半身は白と紺のボーダー柄の半袖ニット。オフホワイトのスラックスはクロップド丈で、足首がひんやりとする。
 それでもこの格好でやって来たのは、私がアパレル店員だからだ。

 売場に出れば、私たちはいわば歩くマネキンだ。春夏の服が売場で展開するこの時期、コートの下はどうしても季節とちぐはぐになってしまう。
 だが、今日はそれがちょうどいい。冷たい風が、思考を落ち着かせてくれるから。

 今日も冷静に、着実に。
 一度自分に言い聞かせ、私は自分のテナントへと向かった。


 店舗へ着き、荷物をしまってからジャケットを羽織る。首からネームカードを下げたら、私の〝店長〟としての一日が始まる。

「不動店長、おはようございます。今朝は一段と冷えますね」

 スタッフルームのパソコンを立ち上げていると後方から声を掛けられ、振り向いた。真霜(ましも)由亜(ゆあ)だ。

 彼女は新卒入社の二十五歳。店長をめざしている彼女には現在、私の下で店長業務補佐を担ってもらっている。

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