クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
あっという間に一か月が過ぎた。
店長業務と並行して、店舗改変案を具体的に落とし込んでゆく。そんな毎日の仕事に、私は徐々に慣れてきていた。
店頭展開するベビー・キッズ商品は他店舗との比較や本部からの提言で、私が提案したものでゴーサインが出た。店内の通路脇にメンズ・レディースの新作をひな壇展開する案は実際の倉庫型店舗で実験し、十分な通路幅が取れるかを検証しているところだ。
今私は、売場改変に必要な人時や発注数の計算に追われている。智田SVと話し合いはするものの、具体的な数字のチェックが主な今は、打ち合わせ自体が数分で済むことが多い。
だからか、彼のドジを目にすることは少なくなり、恋に似た胸の高鳴りも勘違いだと言い聞かせることで抑え込むことができていた。
休みの日は、私の店と似たようなショッピングモール型のテナント店へ視察がてらお邪魔してみたり、隣にあるベビー用品店の他店舗へ行ってみたり。仕事に忙しく過ごし、あっという間に日々が過ぎてゆく。
日差しは日に日に強くなり、冬から春本番へのスイッチがやっと切り替わったような、四月の半ば。
私は電車に揺られながら、車窓を流れてゆく景色をぼうっと見ていた。
これから、横浜のとあるホテルへ向かう。今日は、母の申し込んだ婚活パーティーの日なのだ。
服装は、着なれないワンピース。婚活パーティーは知らない人ばかりだろうから、どうせならいつもの〝クールなおひとり様〟は封印し、真霜のような愛されキャラ風の恰好をしてみようと思ったのだ。
私も恋ができるかもしれない。そうすれば、彼を目の前にした時の胸の高鳴りも消えてくれるかもしれない。そんな期待をしてのことだ。