クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 予想を裏切らない彼女の仕事ぶりは素晴らしいと思う。上司として、誇らしい。
 だが、彼女へ好意を持つ者としては少々つらい。彼女との打ち合わせの時間が、数分で終わってしまうのだから。

 こんなに彼女と顔を突き合わせる時間が短くなるのなら、バーベキューの日にもっとアピールをすればよかったと、智田は何度も後悔した。

 彼女が飲み物を勧めてくれた時、彼女とふたりきりになれた時。タイミングはいくらでもあったが、ドジをしないように集中したり、逆にドジをしてしまったことに動揺したりして、結局なにもできなかった。

 後でもチャンスはあると尻込みする気持ちに言い訳をして、行動に起こせなかった自分は臆病者だ。
 そのことを決定的に思い知らされたのは、彼女が店舗のスタッフルームでしていた会話を聞いてしまった時だった。

 バーベキューから三週間ほどが経ったある日、智田はいつものように週一の店舗運営フィードバックのため不動の店舗を訪れていた。
 予定より早く着いてしまったので、ひと通り売場を回ってからスタッフルームに向かう。
 だが中から不動と真霜の会話が聞こえ、つい足を止めてしまった。

『婚活パーティーに行くことになったの。でも、どんな格好していけばいいのか分からなくて』
『なるほど、店長は春に春を探そうというわけですね! 素敵です〜』

 不動の声は静かだったが、『婚活パーティー』というワードが智田をひどく動揺させた。しかも、続く真霜の声が弾んでいたからなおさらだ。

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