カッターナイフ / 一生涯抜くことの出来ないある男の話
洋平の自宅は兵庫県の武庫之荘にあった。
近くには大きな公園があり、そこからあまり離れていないマンションで両親と、妹との四人家族で暮らす。
地元の公立中学に通っており中学二年、特に目立ったような成績ではない。
クラブは陸上部であったが性格は社交的な風ではなく、むしろあまり話をするのが好きでない、悪く言えば陰気な印象のする少年である。
背丈はあまり高くなく、体の線は細く見えた。
いじめられるようなタイプではあったが、環境的に幸運で彼のクラブの友人たちのおかげで、それもなく平穏な生活を送っている。
夏休みに、一週間ほどクラブ活動が休めることになった。
が、洋平はさして用事がある訳でもなく、のんびりと何もしないで暑さをしのいでいこうとしていた。
たまたまその前に法事があり、広島の尾道の親戚一家が家に訪れてきた。
その一家には洋平より4歳年上の従兄がいた。
洋平はその従兄から、尾道に一度遊びに来ないか、と誘われ、正直、最初は面倒なことだ、と感じた。
だが、特に予定があるでなし、また尾道という場所に興味を惹かれている事実もあった。
もちろん両親は、何もしないでごろごろ家に居るよりも洋平が外に泊まりにいってくれる方を勧めた。