カッターナイフ / 一生涯抜くことの出来ないある男の話
 彼女は話を続けた。

「このことは兄ちゃんだけ、ちょっとはわかってるかなと思うんじゃけど。

何も言えへんし、そんな話もしよらんし。

なあ洋平君、うちが兄ちゃん刺した、ていうことどっかで聞いた?」

「うん。従兄から聞いたけど、何でやとか詳しいことは従兄も知らん、ちゅうてた。」

彼女は

「あれ。ほんまのことなん。

うち、兄ちゃんカッターで刺してしもて。

うちの兄ちゃん、割合モテてて、彼女もしょっちゅう変わってる。

じゃけ調子乗って彼女に手上げたり蹴ったりもしよるんよ。

ほんで。

前に付き合いよった彼女に酷いことしてて。

うち、その女の人、ぶち好きで。

あんまり酷かったけ、うち、カッター握って二人の中に入って止めなあかん、て思て。

その人、助けなあかん、て思て。

そしたら、兄ちゃんの腕にカッター刺さってしもてた。」
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