冥王の寵妃 〜冤罪追放された元聖女、冥界の主に偏愛される〜

エピローグ


 閃光が走る。
 冥宮の大回廊、冥王の間から繋がる広大なその空間で、ふたつの影が互いに接近し、交錯する。いずれの腕からも眩い光が放たれている。
 そのうちのひとつは壁に逸れたが、もうひとつは相手の腕を掠めた。

 「……痛ったあ。ひ、酷いじゃないか。なにするんだよお」
 「うるさい! 黙って討たれろ!」

 情けなさそうに投げられた苦情を、その娘はまったく聞く気もないようだった。疾走しながら前を走る男の背に次々と光の弾丸を放ってゆく。

 娘の全身を包む白銀の鋼は、鎧とは違うようだ。いくつかの箇所が小さく明滅している。彼女の虹色の髪をとおり耳から目を覆っているのは、半透明の片眼鏡のようなもの。なにかの文字や数字が忙しなく現れては消えている。
 腕に持つのは、金属の武器。光の弾丸はその先端から射出されているのだ。

 「だ、だから、話せばわかるっていってんじゃん!」

 そう言って腕を振り上げたのは薄青の長髪を後ろで結んだ、黒いローブの若い男。指先から輪のような光が放たれ、相手の娘のほうへ向かった。拘束魔術だ。
 が、娘は即座にそれを躱し、踏み切って彼の元へ跳んだ。おもいきり足を振り上げ、蹴り付ける。

 「ぎゃあ」
 「この、ど変態! お風呂のぞきやがって! あたしが王軍の冥王守護隊長に就任したからって何してもいいとか思ってんじゃないぞこの!」
 「ち、ちが、僕は、君のこと、もう三百年もずっと待ってて、やっと見つけて、嬉しくて……」
 「つくならもっとマシな嘘つきやがれってんだ!」

 再び放たれた光の弾丸を避けつつ、男は全力で逃走しながら叫んだ。

 「ほ、ほほ、ほんとだって! 父たる冥神イーヴェダルト、母たる地母神サナの名に誓って……ふぎゃ」

 悲鳴は、弾丸が尻に命中したことによるものだ。
 ぽっと炎が上がる腰をばんばんと叩きながら、冥王ルーフェスは五百年もまえ、幼い頃に父から教わった言葉を思い出していた。

 女は、怖いぞ。

 <了>


< 16 / 16 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

大書庫の白薔薇は恋の矢印を間違える〜推しの恋を叶えるために化けてみたら、なぜか王子にロックオンされました〜
壱単位/著

総文字数/24,832

ファンタジー24ページ

第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
ノエラは貴族学院の大書庫に勤める超ひきこもり陰キャ司書。 彼女の唯一の癒しは、友人であり「最推し」の令嬢、フィオナと過ごすことだった。 だが、フィオナは入学の動機となった恋に破れたことを理由に退学を決意してしまう。 ノエラはパニックになりながらも、ひとつの計画を思いつく。 そうだ……わたしが、当て馬になろう。フィオナさまが引き立つように。 書庫に眠る膨大な知識を活用して、彼女はいにしえの悪役令嬢に変身する。 容姿に負い目のある彼女。せめて笑ってもらえればとだけ願い、皆の前に出た。 しかし、彼女を目の前にした生徒たち、そして王子の反応は思いもよらないもので……。 ☆.。.:*・恋の矢印が交錯する、勘違い全力疾走ラブファンタジー!。.:*・°☆.
冷血公爵の夜の顔〜娼館育ちの令嬢は薔薇の狼に溺愛される〜
壱単位/著

総文字数/136,571

ファンタジー36ページ

第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
健気で真っ直ぐ、だけどぽんこつ風味のヒロイン。 無口で冷徹、だけどとんでもないクセありなヒーロー。 あははと笑って、ぐすっと泣いて、手に汗握って。 そうして最後は登場人物たちと手を握って 青空にジャンプしたくなるような、そんなお話にしてみました。 ニアナと一緒に幸せになってください! ようこそ公爵家へ、そして銀の魔女亭へ! *カクヨムコンテスト10 ファンタジー恋愛部門 中間通過作品です。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop