ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー
マリーは夜会デビューで緊張の中、ダニエルの腕に右手を組み教えられた身のこなしをした。美しさが優雅で気高さを際立てる。貴族の令嬢だと言われても誰もが信じるだろう。
その上、ダニエルがエスコートしているのだから、二人は目立って仕方ない。ドレスの中の足は震えていても誰も分からないのだ。音楽が優雅に流れる。それに合わせてダニエルがマリーを広間に連れ出しダンスをする。教えられたことを必死で実践している。
観劇をしているような招待客たちは、お伽話の世界にいる王子と姫の物語が始まる錯覚をした。ハッピーエンドが待ち構えるまでの波乱な物語を期待した。
その舞台裏では部下たちが怪しい人物がいないか、方々駆け回っている。招待客の多さに手が回らないくらいだった。
ダンスの曲が終わるとダニエルは、部下たちに夜会の招待客の様子を聞くため、マリーから離れて部屋を出て行った。マリーは立食の場に行き若い女性に聞き込みをした。
「あの初めましてマリーと申します」
「あっ、貴方ね。ダニエル様と夜会に出席なさったのは」
「はい、そうです」
「どういうご関係かしら?」
「ただの雇い人」
「雇い人?」
マリーは自分のことがバレたら攫われかもしれないと黒装束の男が頭の中をよぎった。
「いえいえ、ただのお友達です」
「何、お友達ですって、ダニエル様の婚約者でないのね」
「そんな深い仲ではないです。聞きたいことがあるんですが、今、若い女性の誘拐事件がおこっているって知っています」
「ええ、知っているわ。今回の夜会でも出席するのを迷ったくらいよ」
「誰か令嬢で誘拐未遂の経験がある方を知らないですか?」
「そういえばローレンヌ伯爵令嬢が危なかったそうよ」
「その方は何処にいますか?」
「あ、あそこにシャンパンを片手に持っているピンクのドレスの方よ」
「ありがとうございます」マリーは急いでローレンヌ伯爵令嬢のもとに向かった。
すると横から腕を掴まれて驚いた。その人物を見ると太った若い男性で、マリーを見て下心丸出しのいやらしい薄笑いを浮かべていた。。
「離してください」
「私と一曲踊ってください」
返事を待たずに腰を抱いて広間の中央に行くのだった。そして曲に合わせて体を動かした。ダンスというより、ただ抱き合って回っていた。マリーは力を入れて引き離そうとしたが、大柄で長身の体格なので身動きもできなかった。諦めて一曲だけ踊ることにした。
曲が終わると男は、マリーの腰を抱えたまま部屋を出た。マリーは大柄な男に腰を密着されたまま、足はドレスの中で宙に浮いていた。
そのまま移動されるのが耐えられなかった。だが驚き過ぎて声が出ない。抵抗しても、もがいているだけのように見えた。男は急いで他の部屋の扉を開けた。すると男女が抱き合ってキスをしているところに遭遇した。男はそれを見て言った。
「失礼」
その扉を急いで閉めるとその横の扉を開けた。