ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー


ダニエルは遠い目をして、両親のことを話し始めた。

それは父親が身分を隠して、母と愛を育んでいたこと。身分を知った時、結婚しなくても一緒にいるだけでいいと言う母のこと。そして父の愛情の深さに心を動かされて、全てを捨て駆け落ちをした。

ふたりは大捜索されて、とうとうみつかってしまった。父親は結婚できなければ、死を覚悟すると言い放った。その思いを重く受け止めた両親、ダニエルにとっての祖父母は、残酷ではなかったのが救いだった。ふたりのお互いを思いやる姿に感動して、間もなくして結婚を許してくれた。

 それからの母は父のために尽くした。慣れないことも多く苦労したらしい。その上、周りからの差別にもあっていた。ダニエルが生まれてから子供のためにと、異常なくらいの尽くしようだった。

そして無理が祟って心と体を壊した。まだ幼い子をおいて、若くして亡くなったことを無表情のままダニエルは言った。

語り終わると母の弱々しい手で、優しく頭を撫でてくれた感触がした。
するとマリーもダニエルの腰を縋りつくように抱きしめた。小さな体の温もりは、ダニエルの押さえていた心の重い塊を解き放った。いつの間にか温かい涙が頬をつたう。膝を抱きしめていたマリーは、顔を上げてダニエルに言った。

「私がいます。一人じゃあないから」

跪いて子供の姿のマリーを抱きしめた。愛おしさが心を穏やかにした。まるであの頃の小さい自分を抱きしめているようにも思えたのだ。風が優しく二人の頬を撫でた。



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