ブルークレールのソワレ ー甘いお菓子と公爵様の甘い溺愛ー
3章 事件の行方と恋心
シューレイノの森で、うさぎが一匹、飛び出した。そしてマリーからほんの少し離れた所で草を頬張っていた。
「可愛い」
マリーは近くにある草を取り、うさぎに近づいて口元に差し出した。うさぎは怖がらずにその草を食べた。マリーは、また草をむしってはうさぎに与えた。自然と笑顔になるのは小さな生き物の可愛さで、いつまでも飽きないで、うつ伏せになって草を食べさせた。後ろから微笑みダニエルが言った。
「人懐っこいうさぎだろう」
「こんなの初めてです。動物って、こんなに可愛かったんですね」
「ここは人があまり入らない所だからうさぎも人間を警戒しない」
「生き物に触れられて、森の緑に癒されて、ここは自然の宝庫ですね」
「母が教えてくれた所だ」
「公爵邸では見ないですが、お母様は今どこにいるんですか?」
「母は亡くなった」
「ごめんなさい。言いにくいこと聞きました」
「いや、大丈夫だ。子供の頃に亡くなって、だいぶ経過している」
「思い出の場所だったんですね。そんな所に私を連れて来ていいんですか?大切な場所なのに」
「だから来た。マリーと来たかったからな。私は幼い頃、寂しくなったらここへ来ていた。今は行き詰また時や穏やかになりたいときに来る。今日はマリーにこの場所を知ってもらいたくて連れて来た」
「私に?」
「そう母に会ってもらっているような気がするのだ。大切な人だからな」
「お母様は、どんな人でしたか?」
「私の母は貴族ではない。庶民だった。父は政略結婚を断り母と結婚した。この世の中は貴族に自由な恋愛ができない時代だ。でも父は、母と大恋愛して結ばれた。そんな母は貴族の両親に認めてもらうために精一杯、公爵家に尽くした。父のために」
ダニエルは遠くを見て語った。まるであの頃に心を戻しているようだ。