捨てられ仮面令嬢の純真
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 レオが新たな王になるというのはまだ極秘事項だった。しかし館の人々には伝えないわけにいかない。彼らも身の振り方を考えなくてはならないから。
 セレスとレオは男爵夫妻だ。だから小じんまりした館を貴族街の端にかまえていたのだが――。

「私どもは……どうなりましょうか?」

 家政婦長アネットは、使用人一同を代表し主人に尋ねた。開け放たれた居間の扉の外には、心配そうな下男と女中、料理人らがのぞいていた。
 レオが国王に、そしてセレスが王妃になってしまうなら当然王宮で暮らすだろうし、この館は閉めることになる。

「……ラヴォー公爵家から来てくれた者も多いし、戻れるように手配しよう。王宮についてきてくれてもいいが……」

 レオが迷うと、セレスは申し訳なさそうに首を横に振った。

「宮廷には厳しい作法があるし、使用人の中にもハッキリした上下があって……私とは、ここでのように近しくできないと思うわ」
「えええー? 奥さまといられなくなるんですかあ?」

 切ない声をあげたのはコラリーだった。セレスの専属侍女として、とても仲良くなっている。離れたくないのはセレスも同じだ。

「王妃の周りには貴族のご令嬢が配されるのが通例だもの。コラリーがいじめられたりするのは嫌なのよ」
「うっわ。王宮ってそんなことがあるんですか。どうしよ……」

 コラリーは顔をしかめた。このおおらかな商人の娘を連れていっても堅苦しい宮廷には馴染めないだろう。王妃に仕える上級侍女は、行儀見習いや箔づけのため貴族の娘が務めるものだ。

「――私はレオさまについて参りますよ」

 宣言したのは執事のダニエルだ。彼ならば公爵家で作法を仕込まれており、侍従の仕事もこなす。王宮だろうとなんの問題もない。

「私は公爵邸に戻ります。この館で雇われた者の仕事ぶりは私が公爵さまに保証しますから、皆は安心なさいね」

 アネットは下男や女中の不安を拭うために主人夫婦に直談判しているのだった。どこまでも下の者を気づかう姿勢がセレスの気性とも合い、頼りになる家政婦長だ。別れるのが寂しい。

「はあ……でも私は悩みますー」

 ひとり去就に迷うのはコラリーだった。専属侍女は他の使用人とは違い、セレス個人に仕える存在。公爵邸へ行っても仕える相手がいない。

「いいのよコラリー。まだ時間はあるわ。一緒に考えましょう」

 セレスはコラリーにも幸せになってもらいたかった。切ないため息をもらすセレスの隣で、レオはハタと思いついた。ウスターシュ。

(コラリーはウスターシュをどう思っているだろう。好意があるなら結婚を勧めるとか……いや俺からそんなことは差し出がましいか)

 これはちょっと根回しが必要な案件だ。セレス経由でコラリーの気持ちを確かめねばならなかった。


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