捨てられ仮面令嬢の純真

 セレスが探りを入れたところ、ウスターシュについて「一緒にいて楽な人」だという評価が返ってきた。微妙すぎて傍からは話が進められないので、直接会わせるしかない。

「まあコラリー、お店だんて素敵ね。でも……ちょっとした資本が必要なのではない?」
「です。そのためにもしばらく働かなきゃって思うんですよ」

 コラリーはあくまで自分の力でなんとかするつもりらしい。男に頼ろうとするより健全だと思うが、ウスターシュの気持ちを考えると複雑だった。

 市場に到着すると、セレスとレオに気づいた人々が集まってきた。口々に戦勝の祝いと施しへの礼を伝えてくれて二人は感激する。いつの間にか皆に愛されていた妻のことが誇らしくてレオは満面の笑みだ。

「だってそれは、セレスちゃんの人徳ってものよ」

 パン屋のおかみさんが笑ってセレスの背をはたく。レオが公爵家の息子だと知り小さくなっていたのに、懲りていないようだ。セレスが王妃になってから青ざめないといいのだが。

「あれ、レオ! 奥方とコラリーさんも」

 ひょいと寄ってきたのはウスターシュだった。偶然をよそおっているが目当てはコラリー。いつもより格好つけた笑顔でなんだかおもしろい。セレスは笑いをこらえながらコラリーにささやいた。

「……ウスターシュさんともあまり会えなくなるかも。話しておいたら?」
「ああ彼、館を閉めるのは知ってるんですもんね」

 王位の件について騎士団員は承知だ。コラリーが行き場をなくしていると聞いて、ウスターシュは張り切っているらしい。二人にするから頑張れ、とレオは目配せをした。

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