捨てられ仮面令嬢の純真
セレスは今、素顔だった。
もちろん化粧はしている。以前レオが話しに行った、劇場でメイクを担当している化粧師に指導してもらった。
それでも昼間の明るい光のもとで、うっすらと跡は見てとれた。わざわざ人目にさらさなくても――とレオは不安になってしまうのだが。
「いいんです。何からも隠れることなく、私は私のままで王妃のつとめを果たしたいの」
「俺も……セレスは素顔がいちばん綺麗だと思っている」
やや照れながらレオは告白した。仮面を取ってくれた夜にあふれたセレスへの愛は、毎日ふくらんでいくばかり。夫の気持ちを感じてセレスもはにかむ。
「――私ね、レオさまに申し訳ないと思っていて」
「何がだ?」
「この傷……リュシアンさまなんかを庇って傷を負った馬鹿な女でごめんなさい、と」
セレスはほんの少しイタズラな目だった。「なんか」という言い方は、ちょっと前まで不敬だった表現だ。「今ならいいですね?」という正直なセレスの気持ちを伝えられて、レオは苦笑する。
「セレスがおろかなら、この世の女性は全員おろかだよ」
「そんなことは。でも考えたんです、私が真心を尽くしたのはリュシアンさまへじゃなく――マルロワの国へなんだって」