捨てられ仮面令嬢の純真

「セレスティーヌ、おまえのその仮面を見ていると不愉快だ。もう何年になる。いいかげん治らないのか」

 フン、と鼻を歪めてリュシアンはセレスをにらんだ。とても婚約者を見る目ではない。
 泣きたくなるのをこらえ、セレスはうつむいて答えた。

「……怪我は治っております。ですが跡が薄く残っておりまして。殿下にお目にかけるのは失礼だと父に申しつけられました」
「ははッ――寝室でも外さないつもりか」

 セレスは言葉に詰まる。
 二人の婚儀は、もう準備が進められているところだった。
 結婚するということはリュシアンと夜をともにするということ――セレスは王家の血を引く子を産むために嫁ぐのだから。
 だがそれは、こんな茶の席にふさわしい話題とはいえない。黙りこむセレスをリュシアンは鼻で嗤った。

「お堅くて面白味のない女だな。夜も興ざめなことだろう」
「……努力いたします」
「期待はしないぞ。もういい、今日はここまでだ」

 セレスと会うのは義務でしかないと態度で示しながらリュシアンは立ち上がる。足早に出て行きしなに振り返り、投げつけてきた言葉は嫌みだった。

「またミレイユを連れてくるといい。あれはおまえの妹にしては愛嬌のある女だ」

 返事も待たずにリュシアンは行ってしまう。セレスは頭を下げたまま動くことができなかった。


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