捨てられ仮面令嬢の純真

 ミレイユというのはセレスの妹だ。
 ひとつ年下で、愛らしく天真らんまん。ミレイユが宮中に伺候するとリュシアンは楽しげに彼女と話す。そんな二人の姿をながめ、セレスは胸の痛みを感じていた。

「ミレイユ――あの子の方が殿下にはお似合いなのかしら」

 口に出してしまって、セレスの心は崩れ落ちそうになった。
 真面目でつまらないセレス。
 華やかで甘え上手なミレイユ。
 リュシアンの好みは、きっとミレイユだ。

 セレスは過去、身を挺し王太子を守った。頬の傷はその時のもので、その気概を国王陛下に気に入られリュシアンの婚約者になったのだ。
 王太子妃とは、すなわちいずれ王妃となる者。リュシアンと国とを支えるために、作法も学問も必死で学んできたのだが。

「私――なんのために」

 妃になどなっても、ちっとも幸せではない気がする。
 涙ぐみそうになるのをこらえ、セレスはそっと廊下に出た。


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